近傍事例を用いた対話における感情認識

Published in 自然言語処理, 2024

Abstract
ソーシャルメディアでの感情分析や感情的かつ共感的な対話システムの構築を目的として,対話における発話の感情認識 ERC: Emotion Recognition in Conversations が注目を集めている.ERC では,似た内容を示す発話でも一連の発話の内容(文脈)に応じて異なる感情を示すことが知られている.文脈を把握する代表的な手法として,一連の発話を連結し識別モデルに入力する手法がある.この従来手法は,識別対象の発話とその先行文脈(対話)を入力し,識別モデル単体で対象の発話の感情ラベルを予測する特徴を持つ.本研究は,モデル外部のデータベースを活用して従来の識別モデルを補強する方法を提案する.具体的には,識別対象の発話と,意味的に近い発話を訓練セットから検索し,検索した発話(近傍事例)に付与された感情ラベルを基に確率分布を作成して,従来の識別モデルの確率分布と重み付き線形和によって組み合わせる.さらに本手法は,定数による重み付き線形和だけでなく,識別対象の発話ごとに動的に重み係数を変更する方法を提案する.評価実験において,ERC における 3 つのベンチマークデータで,動的に重み係数を変更する提案手法が,従来手法を上回る最高水準の認識性能を示した.

Recommended citation:
石渡 太智, 後藤 淳, 山田 寛章, 徳永 健伸, 近傍事例を用いた対話における感情認識, 自然言語処理, 2024, 31 巻, 2 号, p. 504-533, 2024/06/15, Online ISSN 2185-8314, Print ISSN 1340-7619.

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